2019年3月17日日曜日

パワーLEDドライバIC「CL6807」を使う その1




CL6807

CL6807は35V 1Aまでを扱うことができるパワーLED用のドライバICです。スイッチング方式にて高効率で任意の定電流(Max1A)を流すことができる上、PWM信号の入力にも対応しています。秋月にて、4個150円で販売しています。
今回は、これを使ってVf=9~11V, If=900mAの10W級パワーLEDを点灯してみることにしました。

回路図


データシートに載っている回路をそのまま使います。

Rsの抵抗は、LEDに流す電流を規定する最重要項目です。PWMを無視するとすると、電流I=0.1/Rsで決定されます。5%の抵抗の誤差も考え、E24系列に丸めて0.12Ωを今回は使用します。消費電力はR*I*Iから、多く見積もっても0.12Wです。0.12Ωというとても小さな入手性の悪そうな抵抗値ですが、千石だと酸化金属皮膜抵抗(1W,2W)のラインナップに0.12Ωがあります。日本橋で1本10円で購入してきました。
なお、これだけ小さな抵抗値なので、配線のパターンの抵抗値も無視できません。なるべくVINとISNSに近づくように配置しましょう。

L1のインダクタは1Aは耐えられるものにします。よく売っている緑色の樽型の68μHは1Aに耐えられないので使いません。代わりに、ちょっと大きくなりますが、秋月のこのインダクタを使いました。47μHですが結果的に問題なく動いています。これだと1.2Aまで耐えます。

ショットキーバリアダイオードは、手持ちの1S4を用いました。要はLEDに流す電流とVf(の合計)の電圧に耐えればいいので、1S3でも大丈夫でしょう。効率のためにショットキーバリアダイオードを用いていますが、発熱を許容できるなら普通のダイオードでも多分動きます。

C1は重要です。私は初め、パスコンでいいかなと0.1μFの積層セラミックコンデンサを代わりに使っていましたが、それだとうんともすんとも言わずに悩みました。代わりに4.7μFの電解コンデンサにしてみたところ嘘のように正常に動きました。ということで4.7μF以上の(電解)コンデンサをちゃんと用いましょう

入力は12Vとしました。

工作

ピンアサインはこんな感じ。


半固定抵抗は一応つけた調光用です。ADJ端子はPWM信号のみならず、0.5~2.5Vの電圧を入力することができます。TL431で2.5Vの基準電圧を作り、半固定抵抗で分圧を入力することもできるように作ってみました。今回は使いません。
ICの変換基板は秋月で10枚70円でした。高々足が5本なのでユニバーサル基板に表面実装もできますが、発熱があるので、将来的にヒートシンクを付ける可能性を考えて変換基板を用いました。1枚7円ですし。

コンデンサの問題に悩んだあとは、すんなり動きました。
流石に10Wは凄まじく、1チップだけで部屋が明るくなります。LEDも爆熱です。それでも、抵抗やICやインダクタがアチアチになることはありませんでした。
IC内部のMOSFETのオン抵抗は0.5Ω(@1A)と大きな値ですが、そこまで発熱しないようです。

計測

実はここからが一番試したかった内容です。

データシートを読むと、ADJの周波数は10kHz以上では25-100%の明るさしかコントロールできず、1%からの制御をしたかったら500Hz以下にしろ、的なことが書いてあります。つまり、10kHzだとデューティ比10%だとしても、Lowの90%の間でも電流が流れてある程度はLEDが光り続けるということでしょうか。

データシートのグラフを見ると、ADJがLになったあとのIの低下がやたら遅い気がします。この速度についての言及はありません。


また、ブロック図を見ると、ADJの後段にADJバッファがあるようです。


もしかしたらバッファが割と大きく、なかなか空にならないのかもしれません。Iの立ち下がりが遅いと、パワーLEDを切り替えながら複数点灯する場合に、知らず知らずのうちにACアダプタの電流定格を超えてしまう可能性があります。
これらを確かめるべく、先日届いたところのオシロスコープを使って計測してみました。
入力は2.5kHzデューティ比33%の方形波としてArduinoで作っています。プルダウンはしていません。ちなみにADJのPWMは0.5V以下をL、2.5V以上をHと認識するようです。
CH2は、回路全体のGNDラインに0.12Ωの抵抗を挟んで電圧降下を見ています。


H時の動作は見事にデータシート通りです。L時も物凄く素直な感じです。

まずは立ち上がりを拡大します。


結構立ち上がりは遅いですね。立ち上がりは20μs程度要するようです。データシートに計算式がありますが、ΔVがわからないので評価できません。
縦軸1メモリは10mVでプローブでx10なので、I=100mV/0.12Ω=833mAで計算通りです。

そして立ち下がり。


一瞬で低下します。データシートのグラフと全然違います。スイッチングによる低下とちょうど重なったためにきれいに下がったようにも見えるため、もう1パターンを探しました。

こちらはスイッチングが立ち上がった直後にADJがLになったパターン。


これでも十分速く電圧が低下しています。通常では5μs、余裕を持っても10μs待てば電流は0になると思って良さそうです。


波形を見る限り、立ち上がりが遅いため、高周波数では低輝度より高輝度のほうが苦手そうな印象を受けますがどうなんでしょう?まあ実験して確かめればいいだけなのですが、今回は2.5kHzでの動作を知ることが目的だったためスルーします。もし万一ご要望があれば調べるかも?

→ パワーLEDドライバIC「CL6807」を使う その2

※これらの結果はLEDなどの諸条件によって変化すると思われますが参考まで。

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