2019年2月28日木曜日

自作植物育成ライト 調査編

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最適な光源

光源としては植物育成用のLEDを使うこととします。
しかしこれをただただ点灯するだけでいいのでしょうか?もっと効率的な方法は無いのでしょうか?

実はこんな報告があります。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/attach/1333537.htm
なんと.go.jpドメインです。文部科学省です。

これによると、2.5kHzのパルス波を当てるといいらしいです。しかもデューティ比は33%が最高効率だと。
初めにこれを読んだときは、てっきり明るさ100の光源をデューティ比100%で当てるよりも、明るさ100でデューティ比50%ないし33%で当てるとより成長が早い、という意味だと思っていました。
しかし、どうも実験条件がよくわからない上に、デューティ比に至ってはグラフも数値もないので困っていました。そうしたら、別の日に偶然もとの論文を見つけることができました。

白色LEDパルス光がサラダナ生育に及ぼす影響
森 康裕, 高辻 正基, 安岡 高志

アカウント無しで、しかも無料で読めます。「植物工場学会誌」らしいです。面白いですね。

これの冒頭にめっちゃ重要なことが書いてました。平均の光量子束密度(光合成光量子束密度(PPFD)のことだと思います)が50μmol/m2sになるようにデューティ比を調整したそうです。
つまり、明るさ100の光源をデューティ比100%で当てる vs 明るさ200でデューティ比50% vs 明るさ300でデューティ比33%、ということです。電力消費としてはどれも同じです。
文科省HPには記載のなかったことですが、デューティ比50%も33%もグラフではほとんど違いはありませんでした。なお有意差があるのかは不明です。

そして、デューティ比だと10%だと、PPFDが500μmol/m2sに達するため活性酸素の影響で逆に成長が鈍るらしいです。この500という値はどれくらいの明るさなのでしょうか?

PPFDは光合成にとって都合のいい波長域にバイアスを掛けている値なので、単純には換算できませんが、昭和電工のページに参考値がありました。赤青同時照射のLEDだと5000lx相当のようですね。蛍光灯だと4万lx相当です。ちなみに関係ありませんが、太陽だと晴天昼で10万lx、曇天で3万lxくらいです。

この5000lxという値ですが、案外簡単に到達しそうです。1lx(ルクス)は1lm(ルーメン)の光束が1m2の範囲を照らすときの明るさなので、5000lmの光源で100cm四方を照らしたら5000lxです。
しかし、育成において100cm四方という広大な範囲を照らすことはあまりないと予想され、かつLEDは照射野が狭いので、例えば30cm四方の面積を考えるほうが良さそうです。そうなると面積は凡そ11分の1になるため、450lmの光源で達成できてしまいます。

250lmの育成用パワーチップLEDとかは普通に手に入るので、たった2個でアウトです。テープLEDは明るさが抑えめなので数十個使っても大丈夫だと思いますが(データシートがないのでわからない)、バカみたいに使うとやっぱりダメそうです。作ったら照度計で測ってみます。まぁ危険域の目安として覚えておきましょう。


こちらは、赤、青LEDを使った実験の論文です。

レーザー光によるサラダナ栽培実験
森 康裕, 高辻 正基

最適な赤:青の割合などを調査しています。タイトルは「レーザー光」となっていますが、総じてLEDのほうが成長はいいようです。なおこちらも50μmol/m2sです。
赤:青=10:1がいいようですが、テープLEDなどの場合は割合を自由に選べることが少ないので、 参考程度に。

方針

さて、光源を作るにあたって気になるのが維持費もとい電気代です。とはいえLEDを使うので、実のところ気にするレベルではないでしょう。

それより現実的に問題となるのは、ACアダプタの準備です。 明るい光源となると12Vでも数Aレベルが必要になります。しかし、電子工作で使うようなACアダプタは、電力のクラスが上がると値段もどんどん上がっていきます。これもAliexpressで買うとかなり安いのですが、PSEマークもないようなACアダプタをコンセントに刺しっぱでガンガン使うのは流石に怖いのでやめておきます。
※Aliexpressだと植物育成光源(コンセント)も安く手に入るのですが、同じ理由で怖いので自作する、というのもあります。
そうなると、秋月で1000円程度で買えるACアダプタはせいぜい24W級(12Vだと2A)くらいになります。ということで電源容量はこのあたりを上限として考えることにします。

上記の最適な光源の項目も鑑みて、2.5kHzのデューティ比50%ないし33%で光源を光らせることにします。デューティ比を設けると何がいいかというと、育成速度云々の他に、同じ電源容量で2~3倍の光源台数を扱えるようになるメリットが大きいです。1台1A食う光源として、1A上限のACアダプタだと、普通だと1台しか扱えないところ、33%ではうまくタイミングを調整することで3台まで扱えるようになります。ACアダプタの価格を考えても大変喜ばしいことです。
他にも、たとえLED光源であっても光量を考えると結構発熱するため、放熱が問題になってきます。しかしデューティ比を下げることで通電時間が短くなるので当然発熱量も低下します。
LED寿命の観点からもメリットがあります。単純に通電5万時間と言われるLED寿命を延長できるかもしれない、というより、発熱が抑えられることで寿命が伸びると考えられます。


ということで上記を満たすような光源と制御装置を作っていきましょう。

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